嫌な予感は翌日、確信に変わった。

担任の先生はきりのくんが突然転校してしまった事実をゆっくりと朝礼で話した。

クラスメイトたちがざわめく中、わたしはただ無表情だった。

周りからはすすり泣くような声も聞こえる。

わたしはゆっくりと唇をなぞり、あの熱を思い出そうと瞳を閉じた。

蘇るのは皮肉にも蝉の声だけ。

でも、どうして重ねたのかもわからない。

ドラマでしか見たことがないそれは、どこか神秘的で。

何かを象徴するような、深い意味のある行為だったように感じていた。

嫌悪感は無く、ただ空虚な感情に支配される。

過ちによく似たそれは煩わしいほど鮮明に、わたしに夏を刻み付ける。


「……ばいばい、きりのくん」


声にならなかった言葉は、ふわりと夏の匂いに紛れて。

こうしてわたしの夏は終わった。