「どうしたの?」 「オレって言ってたっけ?」 「オレ? オレなんて使わないよ、僕」 「そう……聞き間違いかしら?」 確かに、僕は今、『オレ』と言った。 自分でも気づいていた。 だが、そのことに、何の違和感も覚えない自分自身に、一番驚いていた。 小学生の頃から今に至るまで、『僕』という名称以外、使ったことはない。 なぜ、今、『オレ』という言葉が出てきたのだろうか。