「明日で退院ね! おめでとうなんだけど、なんか寂しいな!」
あかねさんは窓際に行くと、カーテンを開け、背伸びをしながらそう言った。
僕はベッドから降りると、あかねさんの後ろに立ち、右耳にかかるゴムひもにそっと手を掛けてこう言った。
「右のシャドーは黄色ですよ?」
あかねさんが振り向く。
見えている右の瞳にいっぱい涙を溜めて。
そして、僕の胸に頭だけをつけて泣いた。
僕は肩を抱くべきか迷ったが、声を押し殺して泣いているあかねさんを見ていると、何故だかそうすべきではないと思った。
だから、ずっと頭を撫でていた。


