馬場先生は先程の場所から動かず、僕のいる方をじっと見ていた。

こちらに来る気配は感じられない。

どうしたのだろう。

何を考えているのだろう。

そして、僕は馬場先生に殺したいほど憎まれていたのだろうか。



お互いを監視したまま、僅かな時間が流れる。

そのうち、木々の間を縫って、僕の顔に涼しい風が吹き始める。

馬場先生はその風が合図だったかのように、僕の方に向かって歩き出し、入り口付近で身を屈めた。



何をしているのか、僕の所からは見えない。

どれくらい経っただろう。

馬場先生が元いた場所に戻り、時間にして5分程度だろうか、涼しげな風に異臭が混ざり始めた。

空気も濁り始めている。

僕はポケットからハンカチを取り出し、口に当てた。

たぶん、馬場先生が火をつけた。