「聞こえるか? 相田!」

「聞こえます!」


急にノイズが途切れ、声が聞こえてくる。

琢磨だ。


「ああ……良かった。馬場先生がな、いなくなった。まさかとは思うが、今朝、様子がおかしかっただろ?」

「はい」

「教師の俺が、こう言うのは間違ってるかもしれんが……気をつけろ」

「はい……」

「それでな、馬場先生は……じ……く……」


そこまで聞こえたところで、再びノイズに遮られ、無音になったかと思うと、圏外になってしまった。



琢磨は僕に何を伝えたかったのだろう。

最後に何を言っていたのだろうか。

少し気になったが、僕は楽観的に考えてしまった。

後はもう帰るだけだし、周りにはクラスメイト達もいる。

この状態で、まさか、馬場先生が僕に危害を加えてくることはないだろう。

既にこれまでの警戒心を全て取り払っていた僕は、これから起こる事を軽く見ていた。