「お疲れ様です」 「さっ! チョコパイ食べよう! 勤務後のチョコパイって格別なのよね!」 僕は余計なことを考えずに、持っていたチョコパイをあかねさんの胸スレスレに突き出してみた。 あかねさんは一瞬小さくビクっとしたが、僕のその手からは逃れず、逆に決して届かない距離だということを確認すると、『声』が言ったように、あえてギリギリを保ったまま、若干、貧弱なものを突き出すような素振りを見せた。 そして、僕の目をじっと見つめた後、何事も無かったかのようにチョコパイを受け取った。