下では、何か物がぶつかり合う音がしている。
金属同士が弾き合うような音だ。
ただ、片方は締まった音、もう片方はわざと音を消す構造を有するもののように感じる。
僕は踊り場の手すりに寄りかかり、それを、コーヒーを飲みながら聞いている。
僕はポケットから携帯電話を出し、江口さんに電話を掛けた。
「もしもし! どうしたの?」
江口さんは嬉しそうに電話に出てくれた。
「何してたの?」
「うん、今、お風呂だったの」
「そっか! ゴメンね、じゃあ切ったほうがいいね」
「ううん。大丈夫。これ防水だから」
そう言えば、江口さんの声は風呂場の反響のためか、聞き取りづらかった。
「あ、大した用じゃないんだけどさ、お菓子、何がおいしいかなって。僕、普段、お菓子食べないからさ」
「お菓子? そうねえ……」
「ごめんね。今……ひょっとして裸?」
「うん、バスタブの中」
「見たいな」
「えっ……」


