僕は街灯のない一番暗い所で立ち止まり、息を整え、携帯電話を耳に当てる。
コンビニエンスストアの袋から缶コーヒーを取り出し、それを飲みながら、ゆっくりと人影とすれ違った。
「すみません」
すれ違い様に人影に話しかけられる。
この暗闇の中では、こっちの顔は見えないはずだ。
僕は急に話しかけられて驚いた風を装い、二、三歩、後ろに下がる。
その時だった。
「うおおおおおおお」
坂木が棒状の物を振りかざして走ってくる。
人影はその声に反応し、腰に下げた棒状の物を引き抜く。
僕はそれに驚いたフリをして、素早く、目の前のマンションの階段から、三階の踊り場まで駆け上った。


