マーブル色の太陽



「あのさあ、そっちの獲物、何? 刺されたりすると、お互い旅行、行けないからさ」


そう言うと、坂木の反応を待たずに電話を切る。

切れば、直ぐに掛け直してくるのだが、僕はその度に、通話終了ボタンを押した。

電話をする度に高まる坂木の興奮が、こちらにも伝わってくる。

僕に喋らせまいと、怒鳴るその言葉も、次第に意味不明な雄叫びにしか聞こえなくなっていった。



視界にある物が映る。

僕は、それを目の端で確認すると、坂木に最後の電話を掛けた。


「公園来るまで待てないかもね!」


電話をポケットに戻す。

自分でも気づかないうちに、手のひらには汗が滲んでいた。

その汗は、計画が完成する嬉しさからなのか、緊張から来るものかはわからない。

僕はそれを、ジーンズのお尻にごしごしと擦りつけた。