僕は坂木の家の方角にある、公園から出た路地に立つ。 立ち並ぶ家々の壁は高く、身を低く屈めなくても、僕の姿は隠せそうだった。 さっきの電話をしてから15分が経つ。 そろそろ役者は揃う頃だ。 僕はジーンズのポケットから携帯電話を抜き出し、電話を掛けた。 「あのさあ、もう来てんだけど? まだ?」 それだけ言うと電話を切る。 相手は坂木だ。 きっと、今頃は怒りも頂点に達しているだろう。 履歴から、また坂木に掛ける。