そんな描かれた中のひとり、ちょっとふくよかな女子が言った、


「自分はもっと美人でスリムだ!」


という発言にみんなで爆笑したり、描かれてない人間で、自分のしおりに、自分の似顔絵を描いてくれとせがむヤツもいた。

その輪の中心にいる原田は、嬉しそうに顔を真っ赤にして困っていたが、その顔は僕が見た原田の中では一番輝いていた。

そして、女子に気味悪がられる原田は、もう、そこにはいなかった。

見間違いでなければ、原田は涙ぐんでいたようにも見えた。



僕は、そんな久しぶりの空気の中、坂木の事を注意深く観察していた。

坂木は、直ぐに帰る支度をするでもなく、ただ、しおりを見つめたまま、微動だにしなかった。