中からは少し傷の入ったビー玉が出てきた。

外は透明なガラスで中心部だけ色が施されている、普通のビー玉だ。

だが、真ん中の猫の目のような部分は普通の物とは違い、猫の目というよりも葉っぱの形に近く、彩りも単色の緑ではなく、黄緑と緑が緩やかに混ざったような色合いをしていた。

そう感じるのは僕だけのはずだ。

他の人から見れば、何の変哲も無い、ただの緑色のビー玉に映るだろう。

だけど、僕はそれに見覚えがあった。

いや、今まで一度も思い返すことがなかった。

自分で封印していたんだろう。

忌々しい記憶として。



袋を裏返す。

そこにはヘタクソな葉っぱのマークが、緑色のフェルトで作られていた。

そのマークは、みどりが幼稚園の頃から使っていた、自分を示すマークだ。

「みどりのマーク」だ。