『おい! あの女、落とすか』
また、あの『声』が頭の中に響いた。
(は? お、落とす?)
『ああ、まだ完全じゃないが、お前に気があるぞ』
(そ、そんなわけない!)
『もう少し触れ』
『声』は僕の考えを無視して続ける。
『証拠を見せてやる』
(証拠……?)
『次に来た時に、その菓子をゆっくりと胸の前、そう、スレスレに差し出してみろ』
(は?)
『逃げなきゃ人間として近くに感じている。さらに、ギリギリ突き出すような感じで動かなければ好意がある』
(うそだろ?)
『やれ』
(…………)
『ルールその2だからな』
(そ、そんなこと! で、出来るわけないじゃないか!)
その時、引き戸の向こうに人の気配がし『声』は聞こえなくなった。


