僕は薄暗い世界にいる。

上も下も、右も左もわからない。

ただ、ぼんやりと『声』と合瀬のやり取りだけが見える。

それも、直ぐに暗い世界に覆われ、見えなくなってしまうだろう。


『よう』


『声』がそう言う。

それは、まるで旧知の間柄のような気軽な言い方だった。