『声』にも問い掛けてみる。 だが、いつものように『声』は答えてくれない。 僕は、目の前で繰り広げられていることを、ただ、呆然と見ているしかなかった。 その時だった。 話に夢中な合瀬が、江口さんの前に置いてあるジュースに手を伸ばす。 そして、江口さんが声をあげる間もなく、缶を口元に持っていってしまった。 江口さんは、飲み干されてしまった缶を、悲しそうな顔でじっと見ている。 いや、きっと、飲み口の所を見ているのだろう。 江口さんの態度はあからさますぎて、合瀬はそれにすぐ気づいた。