矢沢さんがベッドから降りる気配がする。 パサパサと立てたビニールのような音は、チョコパイを取り出している音だろう。 「で、どこにいるのかな?」 『腕を突き出せ』 突然、矢沢さんの声に合わせるように、頭の中であの『声』が響いた。 逆らったらまたあの痛みが襲うのだろうか。 僕は、言われるがまま、両腕をまっすぐに突き出した。