僕は自分のベッドの上で目が覚めた。

ここまでどうやって帰ってきたか分からない。

それとも、また夢だったのか。

頭に手をやる。

包帯がない。

ということは、僕が病院へ行ったのは現実で、江口さんとのやりとりも実際に起こったことなんだろうか。



ふと、鏡を見る。

心なしか唇が赤いような気がしてティッシュで拭う。

血の色とは違う、鮮やかなピンクに似た色がついた。

あのやわらかいもの。

あれは江口さんの唇だったんだ。



僕は勉強机に座り、もう一度、今日起こったことを順に思い出していた。

そして、ふと世界史の教科書が目についた。

僕は『声』の言った三十五ページを開く。