『よく我慢したな』

(ああ。熱くなってすまない)

『まあ、いいさ』

(だけどアイツは許さないよ)

『ああ、わかってるさ』


僕は『声』との会話に没頭していた。


「あの……」


学校から出て直ぐの並木道から出てきた影に、一瞬、坂木たちが待ち伏せしていたのかと身構える。

違った。

江口さんだ。

恥ずかしいところを見られてしまった。

僕は顔を隠すように掲げたバッグを降ろした。