「大丈夫です。お騒がせしました。え? はい……相田は何もしてません。ええ、僕がちょっと興奮しただけです」 馬場先生が、腹の突き出た教師にそう言っているのが、途切れ途切れに聞こえる。 僕はその背中を見ながら『声』に話しかける。 (上手く行ったな。なあ、これでいいんだろ? 言われたとおりだったよ) 『声』からの返事はなかったが、僕は視界の上の、三分の一が薄暗く霞んでいることに気づいた。