「先生……あの……僕、車を……車の色を見たような……思い出したような……気がするんです」 「そ、そうなのか? それで、色は何だったんだ?」 先生の車は銀色のステーションワゴン。 街のスーパーでもよく見かけたことがある。 車のことをよくわからない僕でも、それと分かるのは、特殊な部品を付けているからなのか、排気音が他の車とは違っていたからだ。 「たしか……ねずみ……いや、銀色です」 僕は俯き加減でそう言いながら、先生の顔を盗み見る。 先生は僕に気づかれないようにそっとため息をついた。