「で、何を思い出したんだ?」
僕が座るのを促された席には、ご丁寧に紙コップに入ったココアまで置いてある。
自分の手元には、もう少し黒い色。
コーヒーだろうか。
「え〜っとですね……」
僕は朝から、ここが勝負所だと考えてきた。
ここで選択を間違えば、先生に与えるインパクトが弱くなる。
先生が隠す何かを引き出せなくなる。
先生は見たこともないような笑顔で僕の言葉を待つ。
でも、その見た目とは裏腹に、落ち着きなく、貧乏ゆすりを始めている。
机の前に突き出した拳は、固く握りすぎて真っ白になっていた。
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