「頭……痛いんですか?」 「い、いえ、大丈夫です。すみません……」 「あ、いいんです。すみません……」 江口さんはそう言うと、教科書に目を落とした。 僕は細面のキレイな顎の稜線を眺める。 背中まで伸びた黒い艶やかな髪。 その髪の間から時折見える、丸っこいサルみたいな丸い耳。 可愛くてキレイで、とても僕なんかでは、届かないところにいる人だ。 僕は、こうして隣に座り、眺めているだけでいい。 眺めていられるだけでいい。