「おはよう! 坂木君! どうしたの?」
下駄箱にはいつのまにか、沢山の生徒が集まってきていた。
もう、普通の通学時間だ。
その集団をすべてこちらを向かせるくらいの気持ちで続ける。
「頭、打っちゃってさ! よく、わかんないんだけど、声の調整とか効かないんだ!」
「…………」
「耳もさ、少し聞こえが悪くて……。聞き落としてたらごめん!」
僕は最後の「ごめん」を坂木に叩きつけるような気持ちで言った。
「…………」
坂木は、すごく不満そうな顔をして僕を睨むと、そのままどこかへ歩いていった。
残された取り巻きたちは、坂木の急な行動についていけず、僕と目を合わさないようにして、坂木の後を追っていった。


