「M(マゾ)だろあんた。さっきやられてやり返さなかったのがその証拠。殴られるのが趣味なのか?」



羽須美が反論しようと口を開く。だがそれよりも早く目の前の少年が、つなぎの下に隠れていた傷をなぞる。



「ッ………」


「痣も傷もありまくり。相当ボコられてきたんじゃねぇーのか?今だってあんた、痛そうに顔歪めたろ。

まだ前の傷さえ治ってねぇーのに新しい傷ばっか増やして、それであんたはM(マゾ)じゃない、と。

だったらなんで抵抗しねぇーんだ。それともあんた、頭イカレてんの?」



言われ放題。羽須美の傷をひとつひとつ丁寧に消毒していくあたり、この少年はただ毒を吐くだけの悪餓鬼でもないようだ。