手を繋ぐな? そんなの、言われなくても繋いでないわ!
「……本当は繋ぎたいけど」
ポツリと呟いて、私も教室から出た。私ひとりで解決できるかな。相手は、なかなか手強い。大窪くんに相談すれば、一発でパソコンの写真は削除できるだろうけど……。
あんな、キス写真、見られたくない。それに、大窪くんが本気でキレたらどうなるか……。恐ろしくて絶対言えない。
――放課後。
「はい」
「え?」
大窪くんは私に手を差し出してくる。思いっきり、苦笑いする私。な、なんでこういう時に限って……。
「今日は手、繋いで帰ろう」
「あ、あの。恥ずかしいからまた今度に……」
「分かってる。山口さんの緊張が緩和するまで、一週間は我慢したんだから。でもこれ以上は我慢できない」
ああ、これがケバマツゲから条件を出される前だったら、どんなに嬉しかったか……。いつまでも、手を繋ごうとしない私を不思議そうな表情で大窪くんが、のぞいてくる。私、顔に出やすいから気をつけなきゃ!
「山口さん?」
「……手がね、痛いの。け、腱鞘炎ってやつで」
「何をしたら腱鞘炎なんかになるの?」
えっと……えっと……。手を使いすぎるものって何だ⁉
「憂鬱と葡萄と薔薇って漢字を、見ないでも書けるように昨日の夜、何回もノートに書いて練習したから! 私、得意なものないからさ。これ得意分野になるよね」
「……じゃ、今ここで憂鬱って、書いて」
のおおおお‼‼‼‼ そうきたか!
どうする? 私、最大のピンチ‼


