潔癖症の彼は、キスができるのですか?




「今の会話、録音してるから!」

「は? 見え見えの嘘つくんじゃねーよ」


だけど、私がスカートのポケットからICレコーダーを取り出すと、ケバマツゲの表情が変わる。ビビッてる! ざまーみろ!


「だから?」

「え?」

「あんた、本当にバカだよね。奥の手は最後に出せよ」


ケバマツゲは私からICレコーダーを取り上げようと、私の腕を掴んでくる。


「わっ! ダメ‼」

「腕力は私のほうがあるって、見た目で分かるでしょ」


思いっきり抵抗したけど、あっさりケバマツゲにICレコーダーを奪い取られて、今、録音されていた会話は簡単に消されてしまった。


「まだ、なんかある?」

「……ない」


私、バカだ。今のICレコーダーと引き換えに、パソコンの写真を消すこともできたのに。人がいる場所で交渉するべきだった。怒りに任せて、最大の奥の手を自ら水の泡にしてしまった。


「今日、私に手間をかけさせたペナルティとして、大窪くんと今後、手は繋ぐなよ」

「え?」

「手繋いでるとこ見かけたら、写真はばらまくから」


そう言い残して、ケバマツゲは教室から出ていった。