好きだと気づいて。

でも、大窪くんに“好きになりました。付き合ってください”なんて、恋愛経験ゼロの私には、簡単に言えることじゃなくて。


よく分からない、友達よりちょっと特別な関係が続いていた。


「あ、やっぱりゼラニウムの精油の香りだったんだ」

「うん。オーガニックの通販で買ってる。よく分かったね」

「私も好きな香りだから」


休み時間。大窪くんと、教室でアロマの話をしていると、乱ちゃんは不思議そうに私たちを見てくる。


「あんたたち、まだ付き合ってないの?」

「え!?」

「琴音も大窪くんに心開いてきてるように見えるんだけど」


乱ちゃん、鋭い! 私は焦りながら大窪くんの顔を見て、手を横にふった。


「ま、まだそういう関係じゃないよね!」

「うん。まだ口説き中なんだ。でも本田さんから見て、山口さんが心を開いているように見えてるなら、あと一歩かな」

「あと半歩くらいかもよ。頑張れ!」


大窪くんと乱ちゃんは笑いながら話しているけど、私は笑えない。


だって、私、大窪くんが好きなのに。それを言えない自分がもどかしいよ。