ざぱざぱと降りそそぐ雨。その多量なる雨のせいか、外に出ている者は少ない。

正確にいえば、市場にある裏路地に、子供2人がいる程度である。


真っ黒な傘を片手に、無表情な少年。

ボロボロな格好をした、獣のような少女。


ガルルと唸る少女を見下ろす少年の目には、その少女に対する好奇心も哀れみも。なにも含まれていなかった。

ただ見つめ合うままに。

最初に口を開いたのは少年だった。


「ぶさいくなツラ」

「があッ!」


冷淡な口調で独り言のように呟く少年に、少女はまた唸る。