「素材がいいんですー!って、別に大してメイクしてないし」


「まぁな。よし、行け。今日はいつもの乙葉じゃない。頼むから、虎ちゃんの前ではかわいい女の子を演じろよ?」


嵐はあたしの手を引っ張り、トイレから出ていく。


いつものあたしじゃない……か。


だけど別に、かわいい女の子を演じる必要は、ないよね?


あたしの今日の目的は、虎ちゃんに嫌われることなんだもん。


いつもの無愛想なあたしでいいんだよ……。






それなのに……。


見た目が変わったら、歩き方まで変わった気がする。


嵐のチョイスした流行の服が、似合ってる気さえしてくる。


どうしたんだろう。


あたし、浮かれてる……。