あたしだって今までずっと……そうだと信じて疑わなかった。 狼谷君の外見と噂話だけで、彼のことを全部知った気になっていたから。 とにかく怖くて、悪くて、近付いてはいけない危険人物っていうレッテルを貼っていた。 だけど、本当にそうなのかな……? 狼谷君の背中を目で追いながらふとそんなことを考える。 もっと、知りたい。 狼谷君のことを……もっともっと知ってみたいな。 この日を境に、あたしの心の中にそんな気持ちが芽生え始めた。