「そういうことだから。じゃあな」 狼谷君はそう言うと、あたしに背中を向けて歩き出した。 教室とは反対側に向かって歩いていく狼谷君。 きっと屋上で授業をサボるに違いない。 この学校で屋上を利用しているのは狼谷君ただ一人。 屋上は狼谷君だけのもの。 他の生徒は絶対に屋上へあがってはいけない。 『屋上へ行けば、狼谷にボコられる』 いつしかそんな噂が校内に広がった。