「ねぇ、斉藤君!!お願い、待って!!」


ものすごい勢いで廊下を走り続ける斉藤君の背中を必死で追いかける。


だけど、サッカー部でエース級の斉藤君に、運動神経も悪くてトロくて鈍いあたしが追いつけるはずもなくて。


「……――キャッ!!」


気持ちとは裏腹にもう体は限界で。


足がもつれてその場に勢いよく転んでしまった。




「いたっ……」



膝にピリッとした痛みが走って、思わず顔をゆがませる。


だけど、ここでくじけるわけにはいかない。


擦り剝けてしまった膝を手のひらで抑えながら立ち上がると、目の前に手が差し出された。