「あのさ……ケガ、大丈夫だった?」
星哉が出ていきシーンっと静まり返る保健室に入ってきた斉藤君は、申し訳なさそうにあたしの前の椅子に腰かけた。
何故か目を泳がせて落ち着かない様子の彼。
もしかしたら、さっきの会話を聞かれてしまったのかも。
だけど、斉藤君が来てくれてよかった……。
斉藤君が現れなかったらきっと、あたしは我を忘れてこの場で泣き崩れていたに違いない。
あたしは平然を装って彼に笑いかけた。
「うん……。ちょっと鼻血が出ちゃったけど全然たいしたことないよ」
「そっか……。ホントごめん……。本当にごめんな……」
「そ、そんなに謝らないで?」
ボールがぶつかったのだって、ちょっとしたアクシデントだもん。
恐縮しっぱなしの彼にそう言葉をかけると、彼はもう一度だけ「ごめん」といって保健室から出て行った。



