「あ……、狼谷君が行ってくれるっていうんなら……――」
「……――桃華、いくぞ」
え……?どうして?
星哉は最後まで斉藤君の言葉を聞くことなくあたしの体を支えながら歩き出す。
甘くて優しい……大好きな香水の匂い。
またこうやって一緒にいられるなんて夢みたい。
星哉に『桃華』って名前を呼ばれたのが嬉しくすぎて、たちくらみなんていつのまにかすっかりおさまっていた。
「桃華、体育終わったら保健室まで迎えに行くね!」
そんな沙希の言葉に小さく頷くと、あたしはそのまま星哉に支えられて体育館を後にした。
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