これでいいんでしょ……?
そんなあたしの心の声が届いたのか、稲葉君は右手の人差し指と親指を合わせて丸を作る。
『人のこと、平気で殴ったりする人って嫌い。星哉、それで謹慎になったよね?そういうのって……どうかと思う』
星哉が謹慎になったのは、瑞穂ちゃんを助けるためだった。
見た目は不良だし、悪いオーラビンビンにだしている星哉。
だけど、誰彼かまわず喧嘩を吹っかけることもしないし、すぐにキレて暴れることもない。
声を荒げることも、人を傷つけることもしない。
星哉は……平気で人を殴ったりする人なんかじゃないって……
あたし、ちゃんと知ってるよ……?
電話越しから聞こえていた風を切る音がピタリと止まる。
もしかしたら星哉は、あたしを探すのをやめたのかもしれない。
『俺のこと……ずっとそういう目で見てたのか?』
『……――うん。だから、もう星哉とは付き合っていけないから』
涙を拭いながらそう言うと、星哉はしばらくの沈黙の後、声を押し殺すようにこう言った。



