『……――桃華?聞いてんのか!?』
星哉の声に目頭が熱くなるのを必死にこらえて喉の奥から声を絞り出す。
『あのね、星哉……』
『あぁ。なんだ』
『あたしと……』
『あぁ』
『……――あたしと別れて』
そう口にした途端、目から大粒の涙が溢れだした。
唇が震えて歯がガチガチと鳴る。
『もしかして、あいつといんのか!?あいつに言わされて……――』
『違うよ……。あたしが決めたの』
『ありえねぇ……。今、どこにいるんだよ。すぐ行くから場所を言え。さっき路地にいるって言ってたよな?どこの路地だよ』
電話越しから風を切る音が聞こえる。
星哉はきっと、今、必死であたしを探してくれているに違いない。
そう思うと、胸がギュッと締め付けられた。



