いまだにブルブルと小刻みに震えている携帯。
ディスプレイに映る、愛おしい人の名前。
星哉が傷付く姿は……絶対に見たくない。
稲葉君の言っていることはハッタリなんかじゃない。
きっと本気だ。
血走った狂気に満ちた目がそれを物語っている。
このままあたしと星哉が付き合い続ければ、星哉に危険が及ぶ。
だけど、あたしたちが別れれば……
星哉は何事もなく生きていける。
「……――あたし、星哉と別れる」
そんなの迷う余地もない。
答えの決まったあたしは稲葉君を真っ直ぐ見つめてハッキリそう言った。
ねぇ、星哉。
あたしの選択は……きっと、間違っていないよね?



