『いいか。絶対に振り返るな。あいつに顔を見られないように歩け』 あの時の星哉の緊迫した声が今も頭に残っている。 確か、彼の名前は『稲葉』だったはず。 この男の子とは関わりあわない方がいい。 何故かそんな気がしてあたしは「すみません……、急いでいるので……」そう言って頭を下げて彼の横を通り過ぎた。 そのまま歩くスピードをあげて無心で歩き続ける。 そして、角を曲がるとき何気なく振り返ると5メートルほど後ろにさっきの男の子の姿があった。