「星哉は……必死だったんだよ。瑞穂を守る為に……。だけど、得意先の息子に怪我させたって瑞穂の親父はカンカンに怒ってたらしい」


「瑞穂ちゃんは……それからどうしたの?」


「瑞穂は結局父親の言いつけを守って、星哉に言ったんだ。『相手に頭を下げて謝って』って。それからすぐだったな。あいつらが別れたの」


「そんな……」


「星哉が一番ショックだっただろうな。瑞穂を守る為にやったことが裏目に出て別れることになって……。しかも、自分の味方をしてくれるはずだって思ってた瑞穂に裏切られたんだから」


当時のことを思い出したのか、ナオくんは険しい表情を浮かべながらクシャクシャと髪をいじった。


「瑞穂も……どうしようもなかったんだろうな……。アイツ、星哉にベタ惚れだったし。どっちの気持ちもわかるし、なんかやり切れねぇよなぁ」


2年間、何の問題もなく付き合っていた瑞穂ちゃんと星哉。


それが、お父さんの会社の得意先の息子の登場でその関係は断たれた。


もし……


もしも、二人に何も問題が起こらなかったとしたら……


今も星哉の隣には瑞穂ちゃんがいたのかもしれない……。