「桃華を泣かせたかった訳じゃないんだ。俺はただ……――」
ヒロちゃんが言葉を絞りだしてそう言ったとき、グイッと手首を引っ張られた。
「……――おい」
低くてかすれた聞き覚えのある声。
あたしの体はあっという間にヒロちゃんから引き離される。
そして、星哉はヒロちゃんの胸を手のひらで力強く押しのけた。
「……せい……や……」
「泣いてんのか……?」
あたしの顔を覗き込むと、星哉の顔がみるみるうちに怒りに変わっていった。
「テメェ、桃華に何したんだよ」
あたしとヒロちゃんの間に割り込んでヒロちゃんを睨み付ける星哉。
ヒロちゃんはハァと一度息を吐いた後、真っ直ぐ星哉を見つめた。



