「うっ……うぅ……」 ごしごしと目を擦って涙を拭った時、もうそこに狼谷君の姿はなかった。 あたし、何を期待していたんだろう……。 狼谷君と少し仲良くなれたからっていい気になって、バカみたい。 彼の心を掴めるはずなんてないし、ましてやこれ以上仲良くなれるはずなんてないのに。 それなのに…… それなのにどうしてかな? ベンチに座って目があった時、頬に感じた狼谷君の手のひらの熱だけがどうしても忘れられないんだ。