「さっき、あたしが好きな人のことを答えなかったから?それとも、狼谷君に好きな人がいるかどうか聞いたから?」 「ちげぇよ」 「じゃあ、どうして?嫌なところがあるなら、言って?」 「お前のせいじゃないから」 「それなら、どうして……――」 「……――もう行く。じゃあな」 狼谷君は泣きじゃくるあたしの髪をくしゃくしゃと撫でると、そのまま背中を向けて歩き出した。 「……――っ」 どんどん小さくなっていく狼谷君の背中。