「うわぁ……。もうどうしたらいいのか全然分かんない」
時間が巻き戻せたら……。そう願わずにいられない。
「あっ」
ベッドの上の狼谷君の体がもぞもぞと動く。
ドクン、ドクン、ドクン。
絶対絶命の大ピンチに、心臓が壊れそうなほど大きな音を立てて鳴り始める。
ダメだ。もう逃げ切れない……。
あぁ、もうダメだ……――。
狼谷君はゆっくりとした動作で起き上ると、その場で凍りついて動けないでいるあたしに目を向けた。
「……――お前、誰?」
目を細めて鋭い視線をあたしに向ける狼谷君。
とにかく、怖い。
その一言に尽きる。
ヘビに睨まれたカエルのように、ただその場で固まることしかできない。



