「に、逃げるが勝ち……?」


ベッドの上の狼谷君の体がわずかに動いたのに気が付いて、あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


一瞬、ズルい考えが頭に浮かんだ。


狼谷君はまだ覚醒していないはず。


目が覚めてしまう前にここから逃げ出せば、彼の手に落書きをした犯人があたしだってバレないはず。


そうだ。逃げよう……!!


狼谷君にボコボコにされるなんて耐えられない。


泣きながら謝っても彼はきっと許してくれないだろう。


うん。やっぱり逃げよう。


自分を納得させるように一度大きく頷いてから一歩後ずさりする。