両親は慌てて

「私だって、お前を愛しているさ!心も繋がっている!それに信じているよ。お前がそこまで考えてるとは気付かなかったよ、やはり男は駄目だな」

「プラタナス愛しているわ、そう例え離れてしまっても繋がっているものね。貴女が可愛い可愛い赤ん坊の時のまま時間がとまっていたようだわ、やっぱり女は駄目ね」

二人は目一杯の愛情を訴えました。

プラタナスは微笑んで、

「私こそ、厳しい言葉を使ってしまってごめんなさい。お父様、お母様の愛情のおかげで育ってきたのですもの。お二人に育てられた事を誇りに思います」

それを見ていた劇団員達は感心しました。


「やはり、私の目には狂いはなかった」


と満足気に呟きました。



翌日、プラタナスの家に劇団員が迎えにきました。

「手紙は最低でも一月に2通は出しなさい」

「年に最低でも4回は顔を見せなさい」

「髪は一日に最低でも三回は櫛を通しなさい」

「決して恋愛はしない事」

「いつでも帰ってきなさい」
以上、5個条をプラタナスと劇団員は約束し、両親を何とか納得させたのです。およそ、5時間も話し合いが続きましたから劇団員はヘトヘトで寝不足気味です。
ですが、疲れている顔を見せたら面倒くさい事になるのがわかっていたので顔を引き締めプラタナスの家の前で待ちました。

すぐに満面の笑みのプラタナスが出てきました。
両親は、やっぱり悲しそうな顔をしていますが昨日よりは随分マシです。

「では、行ってまいります」
プラタナスはサッパリしたものでササっと劇団員達の中に入りました。

両親は涙を浮かべながらも、必死に愛を伝えていました。

頃合いを見て、劇団員達は歩き出しプラタナスも大きく手を振り去っていきました。

町の人々は「姫君プラタナス」「悪魔に狙われるプラタナス」など、また面白がって噂し続けました。

それから、何年か経ちプラタナスの名前はどんどん有名になりました。
輝く美しい髪は舞台ではよく栄え、彼女の美しさを際立てるのです。
更に彼女の演技力は、神懸かっており演技だと分かっていても演技ではないと思ってしまうほどなのですから、プラタナスの出る演劇はいつも大人気です。

天性の才能だ、と持ち上げられても、プラタナスは傲慢にならず「いいえ、才能なんてありません。ただ、産まれた時から努力していたのです」と謙虚に答えるのです。

この言葉も有名になり、「努力家プラタナス」と言われます。

プラタナスの故郷でも、もちろん「努力家プラタナス」と皆が噂をして小さな町から女優が出た事を誇りに思うようになりました。

もちろん、プラタナスの両親も娘の努力を称え、そして喜び合いました。

プラタナスの友人も、嬉しく自慢だったのですが一つ気になる事があったのです。


「からっぽ頭のプラタナス」という絶対に消えなかった噂を全く耳にしなくなったからです。

友人はその噂が1番嫌いだったので、いつも消し去ろうとしたのに絶対消えなかった噂です。

何故か違和感を感じる自分を「厭らしい嫉妬だわ」と自己嫌悪に悩まされます。