両親は頭が混乱しながら、聞きます。

「地道な努力?そんな努力見たことないよ」

プラタナスは少しウンザリしながら答えました。

「努力をわざわざ人に見せますか?特に女優になる事が夢だったのですよ。余計に努力を見せる訳にはいかないでしょう」

両親にはサッパリ意味がわかりません。
劇団員達も意味は分からないですが、プラタナスの夢が女優だったと知り満足していました。

「劇団員の皆様、どうぞよろしくお願い致します!私を選んで下さった事を、大賛成だったと思って頂けるよう努力致します!」

プラタナスは、とても美しくお礼をしてハキハキと流暢に話しました。

「こちらこそ。貴女はきっと素晴らしい女優になりますよ」

劇団員は嬉しそうに答えました。

両親は、あまりの展開の早さに驚き叫びます。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!まだ、承諾したわけではないぞ!」

「プラタナス落ち着きなさい!貴女は今浮かれているだけよ。冷静になって」

劇団員は両親に言います。

「ご心配なのは分かります。ですが、彼女の夢が叶うのですよ。女優になるチャンスはなかなか訪れませんし、これは運命だったとしか思えません。彼女の事は我々がしっかり支える事を約束致しますから」

「そうよ。お父様、お母様。このチャンスを逃してしまっては二度と巡ってはこないわ。こちらの劇団はとても有名で志願してもほとんど入れない所なのよ。私を本当に想って下さるなら、どうか願いを受け入れて下さい」


両親は口から言葉が上手くでません。
必死になって父親が、
「お前、娘を劇団員などと甘い言葉で誘惑し自分のものにするつもりだな」

必死になって母親が、
「あぁ、やっぱり魔術にかかっていたのね。私からプラタナスを引き離すように!」

劇団員が焦って「そんなつもりは…」と言おうとした瞬間、プラタナスが大きな声で言いました。

「いい加減にしてちょうだい!貴方達は全く成長しないのね。これじゃ、産婆様の時と同じだわ。あの時に感じた恥をお忘れになって?少しはお勉強になったかと思っていたのに、全く意味がなかった事になるわ!お父様!男性とデートくらいした事はありますわ。男性がどのような事を考えているかも分かっています。お母様、魔術魔術なんて繰り返し呟く事で、自分で自分に魔術をかけている事にお気づき下さい。それに髪なんて切ってもまた伸びてくるのですから、神経質にならないで。とにかく、お二人が知っている私なんてほんの一部にしか過ぎないのです」

両親は色々な真実を聞き泣きそうになりなが、
「一部だなんて、そんな寂しい事言わないで」
と訴えました。

「寂しがる必要はありません。だって、お二人を愛しているからこそお伝えしなかったのですもの。分かって頂きたいのは、お二人を愛しているからこその選択をしてきたということ。辛い思いなんてさせたくないでしょう。それに、今回の件だって永遠の別れになる訳ではないのですよ。私はお二人と心が繋がっていると信じているからこそ、大きな変化にも耐えられるのです」