床の上。


うつぶせに倒れている、金色の髪の男。


辺りは荒らされた様子もなく、静寂を保っています。


医者は、一歩、一歩、倒れている男に近づきます。


トリトマも、医者に続き歩きます。



倒れている男のすぐ側まで、近づき医者は立ち止まりました。


机の上の薬のビン、トリトマが言っていた遺言書…。


確かに、争った形跡もなく、サフィニアの自殺が疑われます。


医者はトリトマに聞きました。


「最近、サフィニアは何かに悩んでいたの?」


トリトマは、真剣な顔で答えます。


「兄貴は、いつも悩んでいたよ。そういう性格だったからな…。」


少し寂しそうなトリトマの声に、医者まで悲しくなります。


二人は沈黙し、ただ立ち止まっていました。


そんな二人に、町の男が怒鳴ります。


「何やってんだ!?早く、サフィニアを調べろ!!」


その声に、医者は驚き恐がります。

トリトマは、医者に言います。


「うるさいよな。俺の気持ちが分かるだろ?兄貴が死んだってのに、感傷に浸る暇もないんだ…。」


医者は俯き、トリトマの言葉に深く同情しました。


そんな医者に、トリトマは言います。


「さぁ、兄貴をみてやってくれ。こんな醜い争いを、さっさと終わらせたいんだ。」


医者は、トリトマの瞳を見つめます。

真剣で強く、そして悲しい瞳。


嘘をついているような瞳ではありません。


「わかったわ…。」


気が進まないとは言えない状況、医者は覚悟を決めます。