こんな時でも徹は意地悪そうな声で遊んでくる。


私が抱き締められるのが好きって知ってて聞くんだから。



「意地悪。
徹のバカ」


「ハハッ…ごめんごめん」



すると、徹が私の耳元で囁く。




「あんまりにシイがかわいいから」




カッと一気に顔が赤くなったのが、自分でもわかる。

そんな私を見て、徹は続ける。



「余裕なんかじゃないよ。
いくら幼なじみでシイをずっと見てても、他の男と一緒にいるのみたら少なからず妬くから。
もう必死だ」


どれだけ俺がシイを好きか分かったか?

と聞かれ、私は頷いた。




―――――キーンコーンカーンコーン…



「やば!ホームルーム始まる」


「急げっ!」



徹が私の手を引いて教室に向かう。



私だけこんな思いするんじゃないんだ、
って思っていいよね…?




窓の外の桜の花はもう散って、葉桜となっている。

もうちょっとで春もおわるんだなぁー…




――――――end―――――――