礼太たちはその日のうちに屋敷を引き上げることになった。
慈薇鬼の二人はあと一日残るらしい。
「心配はないだろうけど」
昼食のあと、ふと奈帆子の絵をもう一度見ておこうと思い立って廊下を進むと、希皿がぼんやりと立っていた。
奈帆子の絵の前に佇む希皿に問いかければ、そう返ってきた。
「念のため、もう一度、この山を散策してみる」
「……そっか」
うなづいた礼太の横顔を見つめながら、希皿が躊躇いがちに尋ねてきた。
「なぁ、一応聞いとくけどさ……あんたがやったのか?」
何を、と尋ねなくても希皿の言いたいことはわかった。
ため息をついて、勢いよく首を横に振る。
「僕じゃ、ない」
「あ、そう」
希皿はあっさりとうなづいた。
しかし、その目がいまいち信じていないようで、少しうんざりする。
「ちょっと、信じてないだろ」
「いいや、あんたじゃないんだろ」
「うっわぁ、いい加減な返事」
「……じゃあ、なんて言やぁいいんだよ」
それは難題だ。
首をすくめると、呆れた目で睨めつけられた。
「あれ、あんたら」
声がする方をみればいつの間にやら奈帆子がいる。
「仲悪いのかと思ってたけど、あんたらは例外?」
奈帆子の問いに、希皿がふんっと鼻を鳴らす。
そんな心底迷惑そうな顔しなくてもいいじゃないか。
地味に傷ついている礼太を知ってか知らずか、奈帆子はおかしそうに笑っていった。
「あんた、やっぱこの絵好きなんだ。今度は逃がさないから」
えっ、えっ?と慌てる礼太をなんのその。
奈帆子は今度は指を傷つけずに、壁から絵を外して、礼太に手渡した。
「あげる。あんたには世話になったから、そのお礼も兼ねて。」
「いや、でも」
「いらなかったら、売っちゃいなさい。そこそこの値はつくはず」
にっこり微笑み、奈帆子は去って行った。
後に残った絵を抱きかかえて、礼太は途方に暮れた。
「……綺麗な絵だな」
希皿が礼太の腕の中を覗き込んで言った。
「……うん」
奈帆子は近いうちに引っ越すと言っていた。
奈帆子の両親ももしかしたらここを離れるかもしれない。
祓ったとはいえ、殺人鬼の悪霊がいた場所だ。
少し経って冷静になったら、気味悪く思うかもしれない。
それとも、やはり奥さんはここを離れられないだろうか。
隼人への思いを浄化することは、簡単ではないだろう。
人の想い、というのはとても、手強い。
慈薇鬼の二人はあと一日残るらしい。
「心配はないだろうけど」
昼食のあと、ふと奈帆子の絵をもう一度見ておこうと思い立って廊下を進むと、希皿がぼんやりと立っていた。
奈帆子の絵の前に佇む希皿に問いかければ、そう返ってきた。
「念のため、もう一度、この山を散策してみる」
「……そっか」
うなづいた礼太の横顔を見つめながら、希皿が躊躇いがちに尋ねてきた。
「なぁ、一応聞いとくけどさ……あんたがやったのか?」
何を、と尋ねなくても希皿の言いたいことはわかった。
ため息をついて、勢いよく首を横に振る。
「僕じゃ、ない」
「あ、そう」
希皿はあっさりとうなづいた。
しかし、その目がいまいち信じていないようで、少しうんざりする。
「ちょっと、信じてないだろ」
「いいや、あんたじゃないんだろ」
「うっわぁ、いい加減な返事」
「……じゃあ、なんて言やぁいいんだよ」
それは難題だ。
首をすくめると、呆れた目で睨めつけられた。
「あれ、あんたら」
声がする方をみればいつの間にやら奈帆子がいる。
「仲悪いのかと思ってたけど、あんたらは例外?」
奈帆子の問いに、希皿がふんっと鼻を鳴らす。
そんな心底迷惑そうな顔しなくてもいいじゃないか。
地味に傷ついている礼太を知ってか知らずか、奈帆子はおかしそうに笑っていった。
「あんた、やっぱこの絵好きなんだ。今度は逃がさないから」
えっ、えっ?と慌てる礼太をなんのその。
奈帆子は今度は指を傷つけずに、壁から絵を外して、礼太に手渡した。
「あげる。あんたには世話になったから、そのお礼も兼ねて。」
「いや、でも」
「いらなかったら、売っちゃいなさい。そこそこの値はつくはず」
にっこり微笑み、奈帆子は去って行った。
後に残った絵を抱きかかえて、礼太は途方に暮れた。
「……綺麗な絵だな」
希皿が礼太の腕の中を覗き込んで言った。
「……うん」
奈帆子は近いうちに引っ越すと言っていた。
奈帆子の両親ももしかしたらここを離れるかもしれない。
祓ったとはいえ、殺人鬼の悪霊がいた場所だ。
少し経って冷静になったら、気味悪く思うかもしれない。
それとも、やはり奥さんはここを離れられないだろうか。
隼人への思いを浄化することは、簡単ではないだろう。
人の想い、というのはとても、手強い。


