どれくらいの時間が経っただろうか。
おそらくまだ30分程度。
今のところ別段変わったことはおきていない。
不思議と家鳴りはおさまっていて、子供の笑い声も聞こえてこない。
何もしないでずっと気を張っておくのは存外疲れる。
不意にぬるい風が礼太の頬を撫でた。
窓は締め切っている。
夏は一日中クーラーをつけっぱなしにしているらしい。
この部屋も下手したら風邪をひきそうなくらいによく効いている。
つまり、外気が部屋に入ってきた?
礼太の手を握る聖の力が強くなった。
食い入るように、ドアの方を見つめている。
ゆっくりと、ドアが開いた。
軋む音すらたてず、滑らかに開いたドアはこれまた一人でに閉まった。
入って……きたのだろうか。
ダメだ、やはり自分には見えない。
華澄も聖も緊張した面持ちをしているが、動かない。
礼太はじりじりしながら声を出したいのを必死で我慢した。
聖の手を握っているのと反対の手で無意識に口を覆う。
どこにいるんだ、旦那さんに近づいているんだろうか。
口を手で覆っていなければ、「あ」と声をあげていたかもしれない。
必死に目を凝らしていたら、不意にベッドの上に浮かぶ異様に白い何かが見えたのだ。
それはひどく優美な二本の腕だった。
まるで淡く発光しているかのように、くっきりと闇に浮かび上がる。
礼太はこくりと息をのんだ。
そのひと組の腕の右手の人差し指には、絆創膏が貼られていた。
ゆっくり、ゆっくりと指が旦那さんの首にまわされる。
優しい手つきから一転、ぐっと力が込められたかに見えたその時、華澄が動いた。
大きく二歩前に出て、何かを、おそらく手に繋がる胴体があるであろうあたりに投げつけた。
ぴたりと時が止まったように思えた。
次の瞬間、あ''あ''あぁぁぁ、と苦しむ声が響き渡り、すっと、白い手は闇に溶けた。
「え、なに、でたかい?」
目が覚めたらしい旦那さんが泡をくったように話しかけてくるが華澄はそれを綺麗に無視してドアの方へ駆け出した。
礼太と聖も慌ててそれに続く。
どこに向かっているかは分かっている。
湧き上がってくるため息は押し殺しようがなかった。
あの絆創膏、あの声、たぶん間違いない。
おそらくまだ30分程度。
今のところ別段変わったことはおきていない。
不思議と家鳴りはおさまっていて、子供の笑い声も聞こえてこない。
何もしないでずっと気を張っておくのは存外疲れる。
不意にぬるい風が礼太の頬を撫でた。
窓は締め切っている。
夏は一日中クーラーをつけっぱなしにしているらしい。
この部屋も下手したら風邪をひきそうなくらいによく効いている。
つまり、外気が部屋に入ってきた?
礼太の手を握る聖の力が強くなった。
食い入るように、ドアの方を見つめている。
ゆっくりと、ドアが開いた。
軋む音すらたてず、滑らかに開いたドアはこれまた一人でに閉まった。
入って……きたのだろうか。
ダメだ、やはり自分には見えない。
華澄も聖も緊張した面持ちをしているが、動かない。
礼太はじりじりしながら声を出したいのを必死で我慢した。
聖の手を握っているのと反対の手で無意識に口を覆う。
どこにいるんだ、旦那さんに近づいているんだろうか。
口を手で覆っていなければ、「あ」と声をあげていたかもしれない。
必死に目を凝らしていたら、不意にベッドの上に浮かぶ異様に白い何かが見えたのだ。
それはひどく優美な二本の腕だった。
まるで淡く発光しているかのように、くっきりと闇に浮かび上がる。
礼太はこくりと息をのんだ。
そのひと組の腕の右手の人差し指には、絆創膏が貼られていた。
ゆっくり、ゆっくりと指が旦那さんの首にまわされる。
優しい手つきから一転、ぐっと力が込められたかに見えたその時、華澄が動いた。
大きく二歩前に出て、何かを、おそらく手に繋がる胴体があるであろうあたりに投げつけた。
ぴたりと時が止まったように思えた。
次の瞬間、あ''あ''あぁぁぁ、と苦しむ声が響き渡り、すっと、白い手は闇に溶けた。
「え、なに、でたかい?」
目が覚めたらしい旦那さんが泡をくったように話しかけてくるが華澄はそれを綺麗に無視してドアの方へ駆け出した。
礼太と聖も慌ててそれに続く。
どこに向かっているかは分かっている。
湧き上がってくるため息は押し殺しようがなかった。
あの絆創膏、あの声、たぶん間違いない。


